| 要旨トップ | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P3-252

鹿児島県喜入のマングローブ干潟におけるへナタリのサイズ分布の季節変化

*片野田裕亮,冨山清升(鹿児島大学理学部)

ヘナタリ Cerithidea cingulata は、潮間帯や内湾の干潟などの汽水域に生息する巻貝である。本種は、ある程度殻が成長すると、殻口が肥厚反転する。本研究では、ヘナタリのサイズ分布の季節変化を調査し、生活史を明らかにすることを目的とした。また、同所的に生息する巻貝であるウミニナ Batillaria multiformis 、カワアイ Cerithidea djadjariensis との種間関係の調査及び、3種の生息密度の調査を行った。

調査は鹿児島県鹿児島市喜入町を流れる愛宕川の河口干潟で行なった。調査区は、マングローブ林の植生がないところから下流に向かってstationEとstationFを設置した。

2006年1月〜2006年12月の期間に毎月1回、干潮時に調査区内の個体採集を行った。各調査区に3つずつ設置した50×50cmのコドラートに含まれるヘナタリ、ウミニナ、カワアイの出現個体数を記録した。また、ヘナタリについては殻幅を計測して記録し、肥厚個体と非肥厚個体の区別も記録した。

サイズ頻度分布の季節変化の調査では、9月〜10月に2mm未満の個体の新規加入がみられるという結果より、この年に成貝が生んだ卵から孵化した稚貝が9月〜10月に新規加入すると考えられる。

3種の種間関係の調査では、3種の出現個体数から求めたω指数(巌 1977)の結果より、ヘナタリ・ウミニナ・カワアイは互いに排他的な傾向がみられず、種間競争は起きていないと考えられる。

生息密度の調査では、ヘナタリとカワアイはstationEよりもstationFの密度が高く、ウミニナはstationF よりもstationEの密度が高いという結果より、ヘナタリとカワアイが干潟の下部を好み、ウミニナが干潟の上部を好んで分布していると考えられる。

日本生態学会