| 要旨トップ | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P3-256

同一河川に混在する淡水魚オイカワ地理系統の繁殖状況

*高村健二,中原真裕子(国立環境研・生物圏環境)

オイカワZacco platypus (Temminck et Schlegel)は本来関東および北陸地方以西の河川・湖沼に分布していたと言われているが、近年アユ放流が盛んになるにつれ、それに付随して全国的に分布を拡大した。アユ放流の多くは琵琶湖産アユを用いたため、分布拡大したオイカワの多くも琵琶湖系統であった。関東地方河川においても1950年代前後からアユ放流が盛んになりその頃から琵琶湖系統オイカワが定着したと考えられる。一方で、それ以前からのオイカワの生息も記録されているので、現在では関東系統と混在した状態にあると考えられる。実際に関東地方河川で採集されるオイカワのミトコンドリアDNA塩基配列を調べたところ、両系統が見つかる河川が多くあった。ただし、もともと自然分布のなかった河川のいくつかでは琵琶湖系統のみが確認された。両者の出現比率を河川ごとに整理した結果、河川によって比率の異なることが明らかになってきた。例えば、関東北部の那珂川と鬼怒川とでは、前者の方で関東系統の占める割合が高かった。ところで、ミトコンドリアDNA解析により混在は確認されたが、両者が同一河川において生殖隔離されているのか、それとも交雑しているのかは明らかでない。関東地方の1河川からは両者に生殖隔離が起きているという報告もある。そこで、交雑実態を明らかにするために、まず仔稚魚におけるミトコンドリアDNAハプロタイプ出現頻度の季節的変化を調べている。その結果について報告する予定である。

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