| 要旨トップ | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P3-257

サクラマスの遺伝構造と移動分散

*北西滋(北大・地球環境),山本俊昭(日本獣医生命科学大学),東正剛(北大・地球環境)

個体の移動分散は、個体群構造や個体群動態に影響を与える主要な要因の1つでと考えられている。サケ科魚類は、一般に母川回帰性を有しており、個体の移動分散は母川とは異なる河川や支流に回帰する迷入によってもたらされる。遺伝マーカーを用いた先行研究から、移動分散の頻度や移動距離は種や地域毎に異なることが報告されており、性や生活史、回遊経路など多くの要因が影響していると考えられている。サクラマスOncorhynchus masouは、一部の雄が河川残留型となって河川内に留まることや稚魚の移動に性差が見られること、河川残留型が孵化場所への定着性を示すことなどから、性および生活史間で移動分散のパターンが異なっている可能性が示唆される。そこで本研究では、各個体を降海型雄、降海型雌、河川残留型の3タイプにわけ、各タイプの移動分散の頻度や移動距離を求めることで、性および生活史毎に移動分散のパターンが異なっているかどうかを求めた。

北海道中西部に位置する厚田川個体群を研究対象とし、2003年から2007年にかけて、10支流から降海型333個体(雄154個体、雌179個体)、河川残留型193個体を採集した。遺伝マーカーとしてマイクロサテライトDNA11遺伝子座を用い、各タイプのFST、isolation by distanceなどを調べた。その結果、タイプ毎に移動分散の頻度や移動距離が異なっていることが明らかとなった。これらの結果をもとに、移動分散パターンの性差および生活史間の差をもたらしている要因について考察する。

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