| 要旨トップ | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P3-259

日本沿岸に回遊するアオウミガメ chelonia mydas の分子生態

*浜端朋子・小池裕子(九大院比文)・亀崎直樹・石原孝(東大院農/ウミガメ協)・武内有加(鹿大院理)・島達也・水野康次郎(ウミガメ協)

アオウミガメは、世界中の熱帯から亜熱帯の海に生息する海棲爬虫類である。アオウミガメは、産卵期にはオス、メスともに産卵浜に近い海域に分布するが、若齢個体や非産卵期の成熟個体は、海草や海藻の生育する比較的浅い海域に集まって索餌することが知られている。日本沿岸にも、亜成体から成体のアオウミガメが多く生息し、沿岸に豊富に存在する海草藻場を餌場として利用していると考えられている。これまでに、太平洋・カリブ海地域のアオウミガメにおいて、ミトコンドリアDNA(mtDNA)を用いた索餌集団の遺伝的構造の解析が数多く行われ、それぞれの索餌場には異なる砂浜で生まれた個体が集合していることが示されてきた。しかし、太平洋地域における索餌集団の遺伝的な研究例は、これまでほとんど行われていない。そこで、本研究では、日本沿岸の索餌集団について遺伝的構造を明らかにするため、八重山列島周辺、鹿児島県奄美大島周辺、鹿児島県野間池周辺、高知県室戸周辺、三重県尾鷲周辺の5つ海域で定置網等に混獲された個体を試料として、mtDNAコントロール領域の解析を行い、32ハプロタイプを検出した。これらのハプロタイプを用いて作成したネットワーク樹では、遺伝的に遠い3つのクレードに分かれることを示された。また、既知の産卵ハプロタイプとの比較によって、今回調べた5つの索餌場のうち、日本以外の太平洋西部や東部を産卵地とする個体の割合が最も高いのは八重山列島周辺であり、索餌場が南から北へ移るにつれて日本で生まれた個体の割合が高くなる傾向があることが示唆された。

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