| 要旨トップ | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P3-276

国立公園周辺における換金作物栽培の増加が鳥類相に与えた影響

*片岡美和,岩田明久(京大・院・ASAFAS),Prawiradilaga,D.M.(LIPI,Indonesia)

二次的環境の構造は、社会的な要因によって急激に変化する。研究対象地のインドネシア、グヌン・ハリムン−サラック国立公園では、2003年に公園地域が拡大された。同時に、公園地域に隣接する村落の一つでは、新しく公園地域に入った二次林の開墾と、換金作物栽培が急激に増加した。

本研究の目的は、急激な土地利用の変化が生物相に与えた影響を、鳥類を指標にして明らかにすることである。調査は、2004年,2006年と2007年の8月に国立公園に隣接する村落で行った。方法は、ラインセンサス法を用いて村落周縁と村落中心部における鳥類相の概要を把握し、ポイントセンサス法によって各土地利用を利用する種を特定した。

村落周縁部では、2004年から2007年にかけて、二次林を利用していた林縁性の種が減少した。村落中心部では、換金作物栽培の増加に伴う草地の消失によって、草地に生息していた種のみならず、草地に生育する低木を移動や採餌のために利用していた種が減少した。また畑地では、コーヒーやキャッサバなど、樹木と組み合わせて粗放的に栽培されていた作物が、樹木を排除した集約的なトウガラシ栽培に転換された。栽培作物の変化によって畑地で樹冠などを利用していた鳥類が減少した。

本調査地では、国立公園の拡大や換金作物栽培の増加を背景に、保護林と農村の緩衝帯であった二次林が失われた。緩衝帯は鳥類にとって重要であっただけではない。失われた二次林や草地は、住民が薪炭材やヤギの餌を採取する場所でもあった。そのため住民が保護林に侵入して薪炭材やヤギの餌を採取することが目立つようになった。よって、国立公園の森林や生物相の保全のためには、隣接する二次林の管理が重要な鍵である。

日本生態学会