| 要旨トップ | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨


シンポジウム S04-4

在来野草種苗を利用した外来植物の防除と植生回復

入山義久(雪印種苗[株]北海道研究農場)

外来生物法(特定外来生物による生態系等に係る被害の防止に関する法律)の施行により、緑化植物の取扱いには注意を要するようになった。要注意外来生物は外来生物法に基づく栽培等の規制が課されるものではないが、生態系に悪影響を及ぼす可能性があることから植物では84種が指定されている。本研究では、要注意外来生物に指定されたシバムギ(Agropyron repens(L.)Beauv.、クックグラス)とカモガヤ(Dactylis glomerata L.、オーチャードグラス)を対象とし、草地植生や自然植生への回復方法を検討することを目的に2つの試験を実施した。

シバムギは多年生のイネ科植物で北海道から本州北部に分布し、北米や欧州の寒冷地域では作物の強害雑草の1つに挙げられる。シバムギと牧草、在来野草の競合力の比較(試験1)では、シバムギ草地に牧草と在来野草を育苗定植し、競合力を調べた。翌年の秋期までに、アカクローバ72.5%、アルファルファ85.0%の被度が得られ、これら2草種はシバムギとの競合力からみて有望と考えた。

オーチャードグラスは多年生のイネ科植物で、牧草として明治時代に北米より輸入され日本全土に広く野生化している。イネ科牧草法面における自然植生への植生回復(試験2)では、オーチャードグラスを主体とするイネ科牧草法面に試験処理を施し、在来野草を播種して定着状況を調べた。翌年の秋期までに、エゾヨモギ45.0%、オトコヨモギ25.0%、ノコギリソウ46.7%の被度が得られ、これら3草種は発芽、初期生育の早さおよび被度の高さからみて有望と考えた。またその導入に際しては、播種前のグリホサート剤散布処理が有効であることが示唆された。

本研究は、科学技術総合研究委託「重要課題解決型研究等の推進 外来植物のリスク評価と蔓延防止策」により得られた成果の一部である。

日本生態学会