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シンポジウム S04-6

"風土"の再構築は可能か−プロセスプランニングの展望

伊東啓太郎(九州工業大学)

"風土"とは、簡単にいうと、その土地が持つ固有の自然条件と理解している。さらに、そこには、人間の自然への働きかけとそれに対する自然からのリアクションが介在する。日本でも、いわゆる「自然再生プロジェクト」が多くの場所で行われているが、それらは、果たして、複雑な要因が入り交じった"風土"の再構築を可能にしているのだろうか。

これまで、我々もいくつかの自然再生プロジェクトの計画・設計に関わってきたが、ここでは、いわゆる"自然再生"の中でも、歪んだ形で我々の目の前に立ち現れている「学校ビオトープ」の計画プロセスについて取り上げる。

このような学校ビオトープは、あくまでも人工の自然(擬自然)であり、自然は簡単には再生することが困難であることを、優れた自然地域での環境教育と学校ビオトープの比較を通して子どもたちが認識することが重要である。そうでなければ、自然は簡単に再生できるのだといった認識が生まれ、逆効果になってしまう恐れがある。一方、学校ビオトープは、正確な知識とプロセスに基づいて計画されれば、こどもの遊びや環境学習のための空間としてだけではなく、生態系ネットワークの拠点としても機能する可能性がある。

2002年5月から、福岡市内の市立小学校の敷地を対象とし、上記のような目的で学校ビオトープの計画・設計を行うと同時に、管理・活用までのプロセスについての研究を行ってきた。本プロジェクトでは、子どもたちや教員の方々に計画の初期段階から参加してもらい、複数分野の人間のコラボレーションにより、環境学習効果の高いビオトープ計画を行うことを目的としている。

ここでは、学校ビオトープの5年間の計画・活用プロセスから、計画手法としてのプロセスプランニングの有効性と課題を明らかにし、さらに、人を含めた地域の生態系保全という観点からランドスケープのもつ意味や"風土"の再構築とは何か、について議論してみたい。

日本生態学会