| 要旨トップ | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨


シンポジウム S07-2

植物相と絶滅危惧種の25年間の個体群変遷

加藤英寿*(首都大・理工),藤田卓(九大・理),高山浩司(千葉大・理)

南硫黄島の植物相調査は過去4回、そのうち山頂部を含めた調査は1936年(小笠原営林署)と1982年(環境庁)に実施され、119種1変種の維管束植物種が記録されている。この中には絶滅危惧種(准絶滅危惧種を含む)が約20種含まれているが、25年間もの間、その現状は不明のままであった。そこで2007年6月に実施された調査において、植物相の現状を可能な限り把握するとともに、1982年の調査結果と比較して25年間の変化を推定した。

今回の調査で採集された約1000点のさく葉標本を同定した結果、現時点で95種(未同定種を含む)が確認され、そのうち過去の記録に無い種(同定の見解の違いを除く)が9種含まれていた。また外来種と考えられる種は7種で、全種数に占める割合は10%以下(小笠原諸島全体では40%以上)と著しく低いが、25年前の調査で全く確認されていなかったシンクリノイガ(外来種)が海岸部を中心に島内に広く生育していた。これはおそらく海鳥などの羽毛に付着して運ばれた可能性が高く、今後も硫黄島など周辺の島から間接的に外来種が持ち込まれることが危惧される。また絶滅危惧種は18種確認され、標高が高い地点ほど多い傾向が見られた。25年前の植物の垂直分布調査結果と比較したところ、山頂部よりも中腹部で植物種の変化が大きかった。この原因ははっきりしたことは分からないが、中腹部で森林面積が少ない(あるいは減少した)ために、台風などの自然攪乱の影響を受けやすかったのではないかと推察される。

これらの結果は、東京都及び首都大学東京により行われた総合調査の成果の一部である。

日本生態学会