| 要旨トップ | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨


シンポジウム S14-4

日本とオーストラリアにおけるタケのクローン構造と開花パターン

井鷺裕司(京大・農)ら

本講演では、日本とオーストラリアに生育するタケ類を対象に、種ごとに異なる開花・枯死パターンとクローン構造や遺伝構造との関係について考察する。

(1)マダケ属のモウソウチクとマダケは、日本に生育する代表的なタケである。マダケは1960年代に全国的にほぼ一斉に開花・枯死した。この時、稔性のある種子はほとんど生産されず、一部生残した地下茎から群落が再生した。これに対して、モウソウチクは大面積にわたって一斉開花することはなく、小面積で開花枯死し、稔性のある種子によって群落が更新している。また、モウソウチクの一つの群落内で開花周期がずれる場合は、異なったクローンが異なった年に開花していることも明らかになっている(Isagi et al. 2004)。

マダケは古くから日本に生育してきたと考えられているが、その遺伝的多様性は著しく低い事が知られている。これに対して、1700年代に日本に持ち込まれたとされるモウソウチクは、一つの群落内においても高い遺伝的多様性を示す。両者の開花様式の違いはこの様な遺伝特性を反映したものと考えられる。

(2)オーストラリア北部に生育するBambusa arnhemicaは過去10年以上にわたって、流域ごとに同調した開花・枯死と一斉更新を続けている。マイクロサテライトマーカーを用いた解析の結果、B. arnhemicaでは、多数の異なったクローンが同一地域内で同調して開花していることがわかった。また、集団間の遺伝的分化は地理的な距離と開花年の違いによって形成されていることも明らかになった。

共同発表者: 兼子伸吾(広島大・国際協力)、Donald Franklin (Charles Darwin Univ.)

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