| 要旨トップ | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨


企画集会 T05-2

温故知新:マメゾウムシの種間競争をとらえなおす

岸茂樹

種間競争はある種における栄養的、時空間的な資源利用を考えるとき、最も基本的な要因である。種間競争の実証研究としてアズキゾウムシCallosobruchus chinensis(以下アズキゾウ)とヨツモンマメゾウムシC. macultus(以下ヨツモン)の室内実験はあまりにも有名である。しかし、この2種間の競争でさえ、多くの追実験が行われたにもかかわらず、最終的な結末とそれを引き起こす原因はよくわかっていない。

種間競争には2つのタイプの競争がある。資源をめぐる消費型の競争と個体間相互作用で生じる干渉型競争である。しかしこれまでの種間競争は資源競争でのみ説明され、干渉型競争はほとんど考慮されてこなかった。演者らはRIに着目し上記のマメゾウムシ2種の競争を再検討することにした。その結果、オスは両種ともメスの種に関係なく求愛するけれども、そのときメスがこうむるコストは種によって異なっていた。つまりアズキゾウのメスは同居するオスの種が変わっても産卵数は変わらないけれども、ヨツモンのメスはアズキゾウのオスと同居したとき著しく産卵数が減少し、さらに生存日数も短かった。以上の事実からRIはこの2種において非対称な影響をもち、ヨツモンが干渉に弱いことがわかった。一方、幼虫間の資源競争はヨツモンが強かった。種間競争の実験は初期導入個体数を変化させて行った。導入ペア数がアズキゾウ:ヨツモン=6 : 2、4 : 4、2: 6のときアズキゾウがヨツモンを駆逐した。しかし、2 : 8のときヨツモンがアズキゾウを駆逐した。マメゾウムシにおける競争の結果は成虫間の非対称なRIによって説明でき、一方、資源競争能力はほとんど関係ないことがわかった。これらの結果をもとに過去のマメゾウムシの競争実験を考察する。

日本生態学会