| 要旨トップ | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨


企画集会 T13-2

ギルド内捕食者になることの代価

*佐藤 智(山形大・農),安田弘法(山形大・農)

捕食性生物の多くの分類群で生じるギルド内捕食の強さや頻度は捕食者の種により異なり、多くの捕食者ギルドで、「ギルド内捕食する」または「ギルド内捕食される」傾向の強い捕食者が存在する。例えば、ギルド内捕食が頻繁に発生する分類群にアブラムシ捕食性昆虫がある。その中でもナミテントウは、他種の捕食性テントウムシと比べてギルド内捕食する傾向が強い。しかし、このようなギルド内捕食の種間差に関係する要因についてはあまり知られていない。

一般に、捕食性テントウムシはアブラムシやカイガラムシを餌として生活しているが、餌種により捕食者のパフォーマンスは異なる。Rana et al. (2002) は、フタモンテントウに、生存と発育に悪影響を与えるアブラムシ種を餌として与え、比較的発育の良い個体を選抜して累代飼育を行った。その結果、フタモンの生存と発育は世代毎に改良されたが、本来、好適な餌であった他種アブラムシに対するパフォーマンスは悪化したことを明らかにした。一方、我々は、広食性のナミと狭食性のナナホシテントウにアブラムシと他種テントウムシ幼虫を与えたときの幼虫期パフォーマンスを明らかにした。その結果、アブラムを与えたときはナミよりナナホシで、また、テントウムシ幼虫を餌としたときはナナホシよりもナミで、それぞれ成長効率が高い傾向があった(Sato et al. 2008)。

これらのことから、狭食性のナナホシでは、特定の餌種(アブラムシ)へ特化することから得られる高いパフォーマンスの代価として餌種に対するフレキシビリティーの低下が考えられ、広食性のナミはナナホシよりも餌種に対するフレキシビリティーが高い結果として、本来の餌であるアブラムシに対する適応度が低いことが考えられた。本発表では、これらの結果を中心にギルド内捕食者としての形質を獲得するメカニズムとコストについて考察する。

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