| 要旨トップ | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨


企画集会 T13-3

寄生蜂-捕食者間のギルド内捕食とギルド内捕食の回避行動

仲島義貴(帯広畜産大)

同一資源を利用する寄生蜂-捕食者ギルドにおいて、ギルド内捕食は寄主内の寄生蜂未成熟個体が寄主と共に捕食者に捕食されることである。この系では、捕食者から寄生蜂に対する一方向のギルド内捕食しか起こらない。ある寄主パッチ内の寄生蜂個体数に捕食者が及ぼす影響には2つあり、1つはギルド内捕食で、もう1つは、寄生蜂成虫によるギルド内捕食の回避行動である。ここで用いるギルド内捕食の回避とは、寄生蜂成虫が、捕食者の存在する寄主パッチでの産卵を避け、他のパッチへ移動することによる寄生蜂個体数の減少である。植食者−寄生蜂−捕食者を用いたいくつかの野外研究において、ギルド内捕食により、寄生蜂個体数が減少するとの報告があるが、上記の2つの要因を分離した研究例はない。

我々は、植食者(ギルド外餌)、捕食者(ギルド内捕食者)、寄生蜂(ギルド内餌)として、エンドウヒゲナガアブラムシ、ナナホシテントウ、エルビアブラバチをそれぞれ用い、1)寄生蜂に寄生された/寄生されていないアブラムシに対するテントウムシの捕食選好性、2)テントウムシが存在する寄主パッチ/寄主パッチに対する寄生蜂の産卵選好性、3)野外におけるテントウムシの存在と寄生率の関係、を明らかにする室内および野外実験を行った。

その結果、1)基本的にテントウムシは寄生蜂に寄生されたアブラムシを好んで捕食することはなかった、2)寄生蜂は、テントウムシが存在する場所を避け、アブラムシだけが存在する場所で産卵を行った、3)野外でテントウムシ密度と寄生率の間に負の相関が認められた。以上の結果は、ギルド内捕食より、寄生蜂によるギルド内捕食の回避のほうが、寄生蜂密度の決定要因として重要であることを示唆する。今回の講演では、これらの結果に加え、アブラムシ密度がギルド内捕食とギルド内捕食の回避の程度に大きく影響することについても議論の対象としたい。

日本生態学会