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自由集会 W18

sexual conflictや配偶者選択がもたらす種分化〜最近の動向〜

企画者: 木村幹子(北大・環境科学), 安元暁子(九大・理・生物)

配偶者選択による生殖隔離は、同所的種分化、隔離の強化、繁殖形質置換などの種分化研究の未解決テーマに解決の糸口を与え得るものとして、古くから注目されてきた。その中心となる問題は、分化の過程にある集団を再び均一化させるように働く遺伝的な交流がある中で、いかに集団の差異を維持・促進するか、ということにある。同類交配を促進する配偶者選択は、どのようにして生じ、どのようにしてこの均一化させる力に対抗しているのだろうか。

最近になって、これまで配偶者選択の範疇外とされてきた交配後の過程にも、cryptic female choiceと呼ばれる隠蔽的な配偶者(配偶子)選択が生じていることが明らかになった。この交配後-接合前の生殖隔離では、配偶者選択だけではなく性的対立(sexual conflict)との関わりも示唆されているが、性的対立は生殖隔離の成立にはどのように寄与しているのだろうか?

また、環境への適応と配偶者選択が多面発現的に生じるときに種分化が促進されるという、生態的種分化との関係の中での配偶者選択の重要性も注目されている。

本自由集会では、sexual conflictがもたらす生殖隔離や、環境への適応と配偶者選択の関連がもたらす種分化について、最近の動向を整理し、理論研究・実証研究の両側面から今後の展望を議論したいと思う。

コメンテータ:浅見崇比呂(信州大・理)

Sexual conflictによる遺伝的多様化:その帰結の一つとして  林岳彦(産総研)

生態的な環境への適応と配偶者選択がもたらす種分化 伊藤洋(東大・総合文化)

性的対立がもたらす交尾前集団間生殖隔離:サッポロフキバッタの事例 秋元信一(北大・農)

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