| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第56回全国大会 (2009年3月,盛岡) 講演要旨


一般講演(口頭発表) H1-03

ウリハダカエデの性転換の方向性ー22年間の観察からー

*丑丸敦史(神戸大),加藤元海(京大),松井淳(奈良教育大)

植物における性転換は個体の年齢(個体サイズ)や様々な環境要因(水分ストレス、低温や強光)などによって引き起こされる。一般に、年齢を重ねるとメス化性転換が増加し、環境ストレス下ではメス化とオス化性転換が共に起こりうることが知られている。

木本性のカエデ属では、年齢(個体サイズ)の増加ではなく、乾燥気象や傷害などによってメス化性転換が引き起こされていることが報告されてきた。しかし、これまでの知見は数年の観察に基づくものであり、長寿命であるカエデ属種に対しては長期観察からその正当性を評価する必要がある。この研究では、鳥取県大山のウリハダカエデの集団を22年間観察した結果から、?年齢増加によるメス化性転換の増加は見られるのか?前年生育期間中の気象要因(降雨量、日照量)と冬の積雪量によって性転換が影響を受けるのか?という問いについて検証した。

その結果、メス化性転換は年齢と日照量の増加に伴い増えること、オス化性転換の観察数は前年の日照量・降雨量と負の相関関係があることが明らかになった。この結果を基にウリハダカエデの生活史における性転換の適応的な意義について議論する。


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