| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第56回全国大会 (2009年3月,盛岡) 講演要旨


一般講演(口頭発表) I1-04

熱帯山地林におけるMedinilla属8種の開花・結実の季節性と気候条件との関係

*木村一也(金大),湯本貴和(地球研),菊沢喜八郎(石川県立大),北山兼弘(京大・生態セ)

ボルネオ島キナバル山の熱帯山地林に生育する低木,Medinilla属(ノボタン科)8種の開花・結実と気温,降水量,日射量との季節的対応について調べた。1年間の継続調査(1996年7月〜1997年6月)とその後4年間に行った断続調査の結果から,Medinilla属には年二回の開花時期がみられ,同所的に生育する8種は明瞭な繁殖の季節性を示し、種によって年一回あるいは二回の開花・結実時期をもつことが明らかになった。花芽形成はほとんどの種で1月から3月のあいだに始まり,それらの花芽形成個体数の変化は数週間前の日平均気温あるいは日最低気温の変化に対して強い負の相関を示した。他方,結実(未熟果実+熟果実)は気温と日射量が高くなる5月から8月のあいだに増加する傾向がみられた。

以上の結果と近年の東南アジア熱帯低地林での知見を総合すると、降水量の減少あるいは日射量の増加とリンクした、おそらく放射冷却によって引き起こされる低温がトリガーとしてMedinilla属の花芽形成を誘導していることが推測され,Medinilla属の開花活動は気温によって制御されていることが示唆された。加えて,高気温と高日射に対応して結実する種が多かったことは,涼しい環境かつ光条件が悪い林床に生育するMedinilla属にとって,それらの気候条件は光合成や他の生理反応の活性化ひいては果実・種子の発達に必要な物質の生産を促しうることを示唆している。


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