| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第56回全国大会 (2009年3月,盛岡) 講演要旨


一般講演(口頭発表) K2-06

シダハバチ類の食相シダ植物の長野県における分布と種構成

*井坂友一(信州大・院・総工),内藤親彦(神戸大),中村和夫(宇都宮大),佐藤利幸(信州大・理・生物)

日本にはシダ植物を寄主植物とするハバチが約50種分布し,その大部分はシダハバチ亜科Selandriinaeに属している.東アジアを中心に分布しているシダハバチ亜科の近縁2属,トガリシダハバチ属Hemitaxonusおよびナガシダハバチ属Strongylogasterに属する日本産20種は,種特異的である.また,形態によるハバチ類の近縁性とシダ類の近縁性は一致しておらず,ハバチ類の近縁種は異なる科や属のシダを寄主としていることが多い.シダハバチ類の種分化が寄主転換を伴ってきたと考えられている.

例えば,シラネワラビハバチはシラネワラビを,その同胞種メスグロトガリシダハバチはクサソテツを寄主としている.これらの寄主植物の分布を標高別分布で見ると,シラネワラビは高地帯に,クサソテツは低地帯よりに分布しており,一部分布の重なりが見られる.同胞種の寄主植物は必ずしも近縁ではないが,混成地域では同時に芽吹く.これより,シダハバチ類における種分化は,よく似た生活環を持つ別種のシダへの寄主転換であったと考えられている(内藤,2002).

では,シダ植物のより詳細な分布および生活環(フェノロジー)は,実際どのようになっているのだろうか.今回の発表では,長野県を5km×5kmで区切り,地点ごとに採集されたシダ植物から,このシダハバチ20種の寄主植物が,それぞれどのような分布であるかを示す.さらに,シダ植物のフェノロジーは常緑性,半常緑性,夏緑性,冬緑性が基本だが,栄養葉と胞子葉の展開期を加味すると,10パターン以上を示す多型である(Sato,1982).これらの情報を統合し,実際観察されているシダハバチの種間関係にどのように対応しているか検討する.


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