| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第56回全国大会 (2009年3月,盛岡) 講演要旨


一般講演(口頭発表) L1-04

移入種であるカラマツが在来の生物多様性に及ぼす影響

尾崎研一,佐山勝彦,上田明良(森林総研北海道),廣永輝彦(地域環境計画)

カラマツは本州中部等が自生地であり、北海道では外来種(国内外来種)である。北海道の外来種リストである「北海道ブルーリスト」ではカテゴリーAにランクされ、在来生物への影響が報告されている。カラマツは北海道の人工林の3割を占め、そのほとんどが低標高地域にあるため、本来、その地域に存在する落葉広葉樹林の多くがカラマツ人工林に代わっている。このようなカラマツの大規模植林により、在来種が消失する一方で、他の外来種が侵入することが危惧される。

蛾類は昆虫の中でも種数の多いグループで、そのほとんどが植食性である。また、カラマツの植林にともなってカラマツを食草とする外来種が侵入していることが知られており、カラマツ人工林が生物多様性に及ぼす影響を調べるのに適した分類群である。そこで、北海道において、カラマツ人工林、落葉広葉樹天然林、そして在来種であるトドマツの人工林における蛾類多様性を調査し、カラマツ人工林が在来の蛾類多様性に及ぼす影響を解析した。

北海道内でカラマツ人工林の多い道央地方と道東地方において、カラマツ人工林、トドマツ人工林、落葉広葉樹天然林をそれぞれ10、6、9林分選び、各林分で携帯型ライトトラップを用いて、7月と8月の新月前後の夜に各1回蛾類を採集した。その結果、各林分で平均約150種、1000個体の蛾類が採集された。種数と個体数には林分タイプによる違いはなかった。しかし、種構成には林分タイプによる違いがみられ、カラマツ人工林と広葉樹天然林には異なる蛾類群集が生息していた。カラマツ人工林もしくは広葉樹天然林でしか採集されない種がそれぞれ100種近く存在した。これらの内、カラマツ人工林でしか採集されなかった優占種はカラマツを、広葉樹天然林でしか採集されなかった優占種はブナ科樹木などの広葉樹を食草とするものであった。


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