| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第56回全国大会 (2009年3月,盛岡) 講演要旨


一般講演(口頭発表) L2-04

北方針広混光林林冠下における稚樹の成長特性と光環境

*中馬美咲,梶幹男(東京大学農学生命科学研究科付属演習林)

北海道に分布する北方針広混交林には、多様な樹種が生育している。その閉鎖した林冠下には比較的光量の少ない場所が数多く存在するが、これまで林冠下の細かな光環境の変化に対する稚樹の形態や機能に関する応答については、ギャップ内での更新に比べて十分には調べられていない。そこで本研究では、針広混交林の林冠下に生育する稚樹が光環境にどのように反応しているかについて知るため、実際の林床で稚樹の成長特性を種間で比較し、稚樹バンクの形成や更新の機構について検討することを目的とした。東京大学北海道演習林内の針広混交林の林冠下に生育する主要樹種9種、各約20個体を用いてそれぞれの上端の相対光量子束密度(rPPFD)、幹長相対成長速度(幹長RGR)、各個体の葉のSLA、葉の窒素濃度の測定をし、解析を行った。その結果、林冠下の比較的暗い光環境下で、樹種ごとに異なる稚樹の成長特性が見られた。エゾイタヤ、オヒョウ、シナノキでrPPFDの減少につれSLAが大きくなる傾向が見られた。これは光量の減少に対応して弱い光を効率的に利用するための順応と考えられた。一方、これらの樹種では幹長RGRとrPPFDとの間に関係が見られなかった。これらの樹種は遷移中間〜後期の樹種とされており、林冠下で葉の形態を変えることで耐陰性を高め、稚樹バンクを形成しているものと推察された。トドマツ、エゾマツは、rPPFDの増加に伴い幹長RGRが大きくなったが、SLAは変化しなかった。これは、葉の形態は変化させずに、伸長成長に資源をより多く分配した結果と考えられる。これらの樹種は遷移後期種であり、光条件が少しでも改善されると伸長成長して弱光環境を回避するという特性を持つと考えられた。


日本生態学会