| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第56回全国大会 (2009年3月,盛岡) 講演要旨


一般講演(口頭発表) N1-07

カワウの餌魚種選好性の解明

*亀田佳代子(琵琶湖博), 岩田靖宏・都築基(愛知県水試・内水面), 大友芳成(埼玉県農総研・水研), 田中英樹(群馬県水試)

近年、魚食性鳥類であるカワウ(Phalacrocorax carbo)による内水面漁業への食害が、日本各地で問題となっている。カワウによる被害評価の精度を高め、適切な防除対策を行うためには、カワウによる餌魚種選好性の有無を把握する必要がある。そこで本研究では、アユに対する被害が懸念されている地域において、カワウの胃内容物分析と採食場所の魚類相調査を行い、カワウに餌魚種選好性があるかどうかを調べた。

調査は、2008年4-6月に愛知県豊川水系の黄柳川で行った。ここでは5月に2回アユの放流が行われたため、1) アユの放流前、2) 1回目の放流後から2回目の放流まで、3) 2回目の放流後、の三期間に分けて分析を行った。

カワウによる餌重要度指数(IRI=(%N+%W)×%O、%N、%Wは胃内容物の個体数比と重量比、%Oは出現率)は期間によって異なり、アユ放流前は、ウグイやヨシノボリ、カワムツなどの餌重要度指数が高かったが、アユ放流後はアユの指数が高くなり、特に2回目の放流後は高い値を示した。Chessonによる餌選択係数(α)を用いて各魚種に対する選択性を調べたところ、1回目放流から2回目放流までの期間では、アユに対して正の選択性を示す個体と負の選択性を示す個体の両者が存在したが、2回目放流後は正の選択性を示す個体が多くなった。1回目放流後と2回目放流後の環境中のアユの割合は、個体数比で3.2%と35.5%、重量比で4.4%と46.7%であり、全期間を通じて個体数、重量共にアユの増加が他種と比べて顕著であった。このことから、アユの割合または現存量が多いと、アユに対する正の選択性を示すカワウが増える可能性が考えられた。


日本生態学会