| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第56回全国大会 (2009年3月,盛岡) 講演要旨


一般講演(口頭発表) N2-05

食物のC/N比とシロアリにおける利他行動の進化

*小林 豊(フロリダ大), Paul Bardunias(フロリダ大), Nan-Yao Su(フロリダ大)

シロアリは、主に枯死植物を食べて生きる。枯死植物はシロアリの細胞組織に比べて非常に高いC/N(炭素/窒素)比を有しており、シロアリは如何にしてこのギャップを埋めるかという問題に常に直面している。本研究では、極端に高い食物のC/N比がシロアリにおける真社会性の進化の引き金となったかもしれないという仮説を提唱する。シロアリの繁殖に必要とされるC/N比は、資源のC/N比よりもずっと小さいので、余剰の炭素が不可避的に生まれる。シロアリはこの余剰の炭素を、利他行動を通して包括適応度を上昇させるためのエネルギーとして利用することができる。本研究で構築する血縁選択のモデルでは、行為者が、与えられた量の炭素と窒素を、利他行動と利己的な繁殖という二つのオプションに最適に分配することを考えた。解析の結果、もし利他行動が繁殖に比べてより炭素を消費するならば、利他行動に分配する資源量は、資源のC/N比とともに増加することが示された。


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