| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第56回全国大会 (2009年3月,盛岡) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) PA1-056

高CO2で生育した植物におけるRubiscoとRuBP再生系間のバランス変化とその窒素利用効率に対する影響

*秋田理紗子,彦坂幸毅(東北大,生命)

強光下での光合成速度の律速段階は、低CO2濃度ではRuBPカルボキシル化反応、高CO2濃度ではRuBP再生反応である。このことから、高CO2環境ではRuBP再生系への窒素分配比率を増加させた方が、より効率よく光合成を行えると考えられている。本研究室で行われた先行研究において、天然CO2噴出地周辺でガス交換測定を行ったところ、高CO2域に生息するオオイタドリでは、通常CO2域に生息するオオイタドリよりも、RuBP再生能力/カルボキシル化能力の比が高いことが示された。従って、このオオイタドリでは高CO2濃度での生育によってRuBP再生系への分配が上昇し、窒素あたりのRuBP再生能力が高くなり、高CO2環境下での光合成の窒素利用効率が上昇する、という仮説が立てられる。一方で、RuBP再生能力やカルボキシル化能力の変化は酵素の活性調節によりもたらされる可能性もあるため、窒素分配の変化を伴っていないかもしれない。

本研究では先行研究で使用されたオオイタドリ集団のうち生息CO2環境ごとに2集団ずつ、計4集団から採取された種子を使用し、これらを2種類のCO2濃度で生育させてガス交換の測定および各タンパク質量の評価を行った。

その結果、生育CO2濃度に依存した能力バランスの変化が観察された。しかし、この変化の有無は集団によって異なった。ただし、現地の生息CO2環境による違いは見られなかった。能力バランス変化が起こった集団でもその変化はそれほど大きくなく、光合成の窒素利用効率に大きな違いは見られなかった。RubiscoとRuBP再生系への窒素分配は、全集団に共通して高CO2濃度による影響を受けなかった。これらの結果は、高CO2環境でのRuBP再生能力とカルボキシル化能力間のバランス変化は酵素の活性調節によりもたらされることを示唆している。


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