| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第56回全国大会 (2009年3月,盛岡) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) PA1-082

高CO2・水温上昇環境下におけるイネの光合成・呼吸の生育に伴う変化

*安立美奈子, 常田岳志, 程為国(農環研),松島未和(千葉大),中村浩史, 大川原佳伸, 鮫島良次(東北農研),岡田益己(岩手大),長谷川利拡(農環研)

大気CO2増加・温暖化が作物の光合成と呼吸消費に及ぼす影響は、将来の作物生産を予測する上で最も重要な要素である。しかしながら、開放系圃場条件において生育期間を通して計測された例は極めて限られており、将来の作物生産予測における不確実要因となっている。そこで、本研究では開放系大気CO2増加(FACE)と水温上昇の組み合わせ処理を2007、2008年の2期実施し、イネの光合成および暗呼吸の生育ステージに伴う変化を調査した。

岩手県雫石町の農家水田にて、FACE(外気+200ppm)・水温上昇(+2℃)処理を行なった。区制は主区をCO2、副区を水温とする3反復分割区法である。光合成速度は3生育時期に最上位展開葉を対象に携帯型光合成測定装置にて、暗呼吸速度は株全体を対象として4生育時期に密閉法にて測定した。

FACEおよび水温処理がイネの生育、乾物生産、光合成、呼吸に及ぼした影響は、2ヵ年ともほぼ一貫していた。すなわち、FACE・水温上昇処理は乾物重を増加させるが、その程度は生育ステージの経過とともに低下した。FACEと水温の影響は概して相加的であったが、FACEによる光合成速度および最大カルボキシル化速度の応答低下は、登熟中期に水温上昇区で顕著になった。水温処理による応答低下の違いは、ルビスコ含有量の減少でほぼ説明できることがわかった。FACEおよび水温上昇で生育ステージが前進したことも、応答低下に少なからず関連しているものと考えられた。一方、株当りの暗呼吸速度はFACE、水温上昇区で高い傾向にあったが、この違いは主として成長量の違いに依存するものであった。


日本生態学会