| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第56回全国大会 (2009年3月,盛岡) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) PA1-097

孤立林におけるネズミモチ・トウネズミモチの競合:異なる光環境に対する順化反応

大杉祥広,*石井弘明(神戸大院・農)

トウネズミモチは、街路樹として都市域に多く植栽されている中国原産の外来種で、在来種ネズミモチと同属である。大量に結実し鳥によって散布されるため、近年都市域二次林への侵入が問題となっている。兵庫県西宮市にある西宮神社の社叢林でも、トウネズミモチの侵入が確認され、在来種ネズミモチと競合している可能性が考えられる。そこで本研究では、両種の今後の成長・競合を推測することを目的とし、林内の様々な光環境下で両種の当年枝の形態的特性と生理学的特性がどのように変化するのか検証した。

ネズミモチでは明るくなるにつれて、当年枝一本あたりのシュート長・乾重は変わらないが、分枝率・シュートの本数が増加した。そのため、葉群あたりのシュート長・乾重も明るくなるにつれ増加した。葉群あたりの展葉枚数・葉面積も同様に明るくなるほど徐々に増加した。トウネズミモチでは、明るくなるにつれて分枝率が増加し、葉群あたりのシュート長・乾重は暗い環境ではほとんど変化しないが、林縁の非常に明るい環境ではネズミモチよりも高い値を示した。トウネズミモチの葉群あたりの展葉枚数・葉面積も同様の傾向であった。また、ネズミモチはトウネズミモチよりも葉寿命が長く、LMAが大きかった。

ネズミモチの最大光合成速度は、明るくなるにつれて徐々に高くなった。トウネズミモチの最大光合成速度も明るくなるにつれて高くなったが、非常に明るい環境では、ネズミモチよりも高い値を示した。

これらのことから、ネズミモチの形態・生理特性は光環境に対してゆるやかに変化するのに対し、トウネズミモチは非常に明るい環境で急激に枝葉を展開し、高い光合成性能を示すことが示唆された。よって、暗い林内では両種は共存できると考えられるが、林縁の明るい環境に侵入したトウネズミモチの成長は著しく、林縁を中心にトウネズミモチの繁茂が懸念される。


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