| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第56回全国大会 (2009年3月,盛岡) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) PA1-167

佐渡島における水系ネットワークの修復 ―トキ採餌環境の整備に向けて―

*山下奉海(九州大・工),河口洋一(九州大・工),谷口義則(名城大・理工),鹿野雄一(九州大・工),田中亘(九州大・工),斉藤慶(新潟大・自然研),関島恒夫(新潟大・自然研),大石麻美(新潟大・自然研),石間妙子(新潟大・自然研),島谷幸宏(九州大・工)

新潟県佐渡島ではトキの試験放鳥が行われ,これに伴い生息環境の再生が行われている.本研究は,島内の環境再生の中で,採餌環境整備のための水系ネットワークの修復に焦点をあてている.

島内の河川流域内には,堰などの横断構造物や水路と水田の合流部に人工的な落差が多く存在する.この落差が水系を縦断的に利用する生物や川と水田の間を行き来する生物の移動を阻害することで,トキの餌量へ影響が及ぶことが懸念される.そこで,島内の天王川水系では,水系内の落差解消を目的に,河川内と水田水路間という2つの異なる環境下において水系ネットワークの修復が行われた.河川内では,落差がある取水堰の修復として,魚道が設置された.また,水田水路間では,排水口と水路間の落差に対し魚道が付設された.この様な環境修復は,今後島内の他流域においても実施される可能性があり,その効果の検証が急務である.本研究では,異なる環境下における修復効果の検証を目的とする.

方法は環境修復を行った河川と水路水田において,修復前後の魚類生息状況を比較した.その結果,河川では,修復前に見られなかった魚種が修復後に新たに1種確認できたが,魚類群集の密度,現存量,多様度指数は修復後に増加が見られなかった.一方,水田水路間では,修復前に魚類が見られなかった水田において,魚類の侵入が認められ,元来魚類が生息していた水田においても,魚類密度,現存量の劇的な増加が見られた.

以上,同じ水系内のネットワーク修復でも修復を行う環境(縦断的,横断的)によって,魚類の応答に違いが見られることが確認された.


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