| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第56回全国大会 (2009年3月,盛岡) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) PA1-173

水辺ビオトープ管理におけるザリガニ駆除方法の検討

石田裕子(摂南大学工学部),江口翔・近藤稔幸・末廣昭夫・近持崇嗣・永井孝明(国際環境専門学校)

水辺ビオトープ管理における問題点のひとつとして,外来種の侵入が挙げられる.なかでも,アメリカザリガニは,水草の食害,水生動物の捕食,水田の漏水,病気・寄生虫の媒介など,多くの影響を在来の陸水生態系に与えていることが知られている.そのため,ザリガニの侵入を防げなかった水辺ビオトープにおいて,その駆除が求められる場合がある.ビオトープの管理は小学校や地域のボランティア団体が行う場合が多く,管理する側の労力や経費などの負担が掛からない方法が求められている.

そこで本研究では,手軽で安価なアメリカザリガニの駆除方法の検討提案を,兵庫県三田市のため池で試みた.2007年8月12日から11月16日の間に,動物性と植物性の安価な餌をそれぞれ入れたカニ籠を1週間池に沈め,その後ザリガニを回収し計数した.

予備実験の結果,最も多くのザリガニを誘引したのはカニかまぼこ(7.0±7.6個体)と魚肉ソーセージ(4.8±4.3個体/籠)であったが,これらはウシガエルやクサガメも捕獲できた.植物性の餌を用いたところ,小麦粉と米糠を練り合わせた糠団子に多くのザリガニが誘引された(19.3±1.2個体/籠,One-way ANOVA, n=3, F=2.87, df=5, P=0.06).次に,糠団子に他の食品等を付加し実験を行った結果,焼き糠団子(5.7±2.1個体/籠)と鰹節を添加したもの(7.0±1.0個体/籠)で捕獲数が多かった(One-way ANOVA, n=3, F=3.11, df=5, P<0.01).焼き糠団子ではフナ類やブルーギルの稚魚も捕獲でき,鰹節では他の生物の混獲が少なかった.水辺ビオトープの抱える問題はそれぞれの場所で異なっており,管理する団体の必要に応じてこれらの餌を使い分ければよいことが示唆された.


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