| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第56回全国大会 (2009年3月,盛岡) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) PA1-178

土壌撹乱と水位管理が休耕田の埋土種子組成に与える影響

*齋藤 友恵(新潟大・院・自然科学),久原 泰雅(新潟県立植物園),石田 信也(新潟大・院・自然科学),高野瀬 洋一郎(新潟大・超域研究機構),紙谷 智彦(新潟大・院・自然科学)

埋土種子による植生の回復は河川や湖沼などの湿性環境で行われており、地域固有の植物を再生できる観点からも期待されている。本研究は、湿地化した休耕田の埋土種子の組成を播きだし実験により明らかにすることで、湿生植物の回復に向けた土壌撹乱の有効性と適切な水位管理について提案する。

調査は2007年から人為的な水位管理と半面の耕起をした新潟市内3ヵ所の休耕田で行った。2008年4月に各休耕田の表層(0-3 cm)、上層(5-15 cm)、中層(25-35 cm)、下層(65-75 cm)から計個の土壌サンプルを採取した。各サンプルは2水位 区(0 cm、5 cm)で播きだし、定期的に出現した植物の種名と個体数を記録した。

播きだし実験によって、計65種、22431個体の植物が出現した。ポットあたりの出現種数は表層と耕起区の上層で多く、次に不耕起上層、中層と下層の順に減少した。この傾向は各休耕田で類似した。その内、湿生植物の出現は先ほどと同様の傾向を示したが、中生植物は休耕田によって異なった。植物の内訳については、アメリカアゼナ、ヒデリコがどの場合でも高頻度に出現した。一方で耕起区にはコナギ、タマガヤツリが高頻度に出現し、スギナ、カタバミ、ハハコグサが無耕起区中層、下層に多いなど、採取土壌の深さや耕起の有無による影響が休耕田を問わず見られた。また種数・出現個体数について2水位区で比較したところ、中生植物だけではなく大部分の湿生植物も水位0 cm区の方が種数・個体数が多く、0 cm区のみで見られたものもあった。

これらのことから、耕起が容易な上層部分の埋土種子を用いて、深水にせずに管理することで、種多様性の高い湿生植物群集の回復が可能であると結論づけた。


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