| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第56回全国大会 (2009年3月,盛岡) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) PA1-180

天竜川水系におけるツメレンゲとクロツバメシジミのハビタットへのオオキンケイギクおよび遷移の影響2

*坪井勇人(信州大院・農), 大窪久美子(信州大・農)

長野県天竜川水系の石積堤防や堤防草地には準絶滅危惧種のベンケイソウ科ツメレンゲ(Orostachys japonicus)と、本種を幼虫期の主な食草とする準絶滅危惧種シジミチョウ科クロツバメシジミ(Tongeia ficheri)が分布する。また同所では特定外来植物オオキンケイギクが一部で優占しており、在来生態系への影響も懸念されている。そこで本研究の目的は両種のハビタットを保全する観点から、群落構造と立地環境条件および生息状況との関係性を解明することとした。

両種の分布する3河川において25m四方のメッシュを177設定した。クロツバメシジミの成虫の分布と移動距離を調べるためマーキング調査を行った。晴天の日中に目撃したクロツバメシジミを可能な限り捕獲し、翅の裏側に識別番号を記入し、新規捕獲と再捕獲されたメッシュ番号を記録した(2008年7月、約5日間隔で計6回)。ツメレンゲは地上シュート数を記録した(10月)。植生調査と立地環境条件の調査は各メッシュを代表する環境に設定した4m2の調査プロットにおいて行った(10〜11月)。

捕獲されたクロツバメシジミは208個体であり、その内13個体が再捕獲された(6.3%)。ツメレンゲの地上シュート数は29332シュートが確認された。

強い正の相関があったツメレンゲのシュート数とクロツバメシジミの出現数は相対光量子密度および石・コンクリートの被度と正の相関があり、植被率およびオオキンケイギクの被度とは負の相関があった(ピアソンの積率相関:p<0.05)。

ツメレンゲ生育地へのオオキンケイギク等の侵入は群落構造および立地環境条件を改変させ、両保全種のハビタットを衰退させることが示唆された。


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