| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第56回全国大会 (2009年3月,盛岡) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) PA2-447

湿地性低木ヘビノボラズの個体群構造に及ぼす水環境と光環境の影響

山口久美子,鈴木一恵,安藤裕子,*肥後睦輝(岐阜大・地域)

東海丘陵要素植物であるヘビノボラズは東海地方の湧水湿地を主な生育立地とする落葉低木である。湿地周辺のアカマツ・コナラ林には、ほとんど生育しないことから、湧水湿地内で生活史をまっとうしていると考えられる。本研究の目的は、湧水湿地においてヘビノボラズが個体群をどのように維持しているかを明らかにすることである。今回は、開花から結実、そして稚樹の発生という更新初期段階において、生育段階間での数の変動を生育環境との関連で解析することにより、個体数変動に影響する要因について検討した。

調査を行ったのは、岐阜県土岐市北部の北畑池湿地である。北畑池湿地は面積約5haで、丘陵地の谷底面に広がった典型的な湧水湿地である。ヘビノボラズが比較的高い密度で生育した湿地中央部に調査区(L1、L2、L3)を設置した。L1とL2(それぞれ1m×15m)は樹高2m前後のシデコブシなどがパッチ状に生育するヌマガヤ優占群落内に、L3(1m×10m)はシデコブシ、イヌツゲ、ミヤマウメモドキなどから構成される湿地林内に設置した。各調査区で、個体ごとの開花数・結果数、当年生稚樹の発生・生存、光量子束密度、基質特性について調査した。さらに冠水状態と適潤状態で播種実験を行い発芽率と生存率を調べた。

生育段階ごとの密度の変化を検討した結果、ヘビノボラズの個体群構造には種子段階での挙動が大きく関与しており、種子落下量あるいは種子落下後の生存確率がヘビノボラズの個体数変動を制御していると考えられた。しかし光環境や水環境が各生育段階に及ぼす影響は小さかったことから、ヘビノボラズの個体群維持には種子散布や種子捕食といった生物的要因が影響している可能性が示唆された。


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