| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第56回全国大会 (2009年3月,盛岡) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) PA2-456

青森県北津軽郡におけるヒバ実生の生長に関与する内生菌の影響

*原和良,山路恵子,小林勝一郎(筑波大・生命環境),森茂太(森林総研)

ヒバの天然更新において、実生は林道のような撹乱を受けた場所に多く出現することが知られている。本調査地において、林道の中でも路面である基岩層のグリーンタフ土と、切り土面に堆積した森林褐色土のB層土に出現した実生では、後者の生長が良好となる傾向がある。その要因として、グリーンタフ土に比べB層土が土壌養分を高濃度に含有することが考えられる。しかし、B層土には植物に生育阻害作用を示すAlも高濃度に含有されており、生長への影響を考慮する必要がある。近年、根部に生息する内生菌による、植物のストレス耐性の増加や栄養成分の吸収助長が報告されている。本研究では、青森県北津軽郡においてヒバ実生に内生菌が感染することによる生長への影響を、土壌養分の吸収助長及びAlの吸収抑制の点から検討することを目的とした。

2007年5月にグリーンタフ土及びB層土にヒバ種子を播種し、2007年9月、2008年5月、7月、9月、11月に地上部及び根部の生長量を測定すると共に、P, Mg, Fe, Ca, K, Alの含有濃度を測定した。また、検鏡によりAM菌の感染率を測定し、表面殺菌した根部から内生菌を分離することで出現頻度を測定した。

その結果、生長量は1年を通してB層土の実生の地上部で有意に増加し、またN, Fe, Ca含有量がB層土の実生で有意に増加する傾向にあった。B層土の実生の生長が良好である要因として特にNの関与が考えられた。Alは1年を通してB層土の実生に高濃度で含有されるが、2008年7月以降含有濃度が減少する傾向にあった。また、AM菌及び内生菌の感染は1年を通して増加する傾向にあり、特にB層土の実生で高頻度となった。以上のことからヒバ実生の生長にAM菌及び内生菌の関与が示唆され、現在内生菌を接種することでNの吸収助長及びAlの吸収抑制の有無を検証中である。


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