| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第56回全国大会 (2009年3月,盛岡) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) PA2-505

環境条件が関係を換える?寄生と相利の間の曖昧な線引き

*福井 眞, 山内 淳(京大・生態研センター)

生物間相互作用は、生き物がどのような環境下におかれているかに依存して変化する。一年というタイムスパンをとってみても生き物の生活様式や採餌戦略は季節変動で変化しうる。環境変動に伴い、生物は相互作用の対象を換えることがあり、寄生生活を送る生物種にとっては宿主の状態変化も環境変化と同様の意味を持つため、宿主個体を乗り換えることとなる。しかし、共生関係の中でも垂直伝播で感染する内部共生の場合、内部共生者は宿主の環境変化を共に経験することを強いられる。

また、内部共生関係を築いている共生者は基本的には寄生的な性質があるものの、他方で宿主との強い相互作用の下、宿主に有益に働く可能性もある。たとえばアブラムシの二次共生菌は、必須共生関係にある一次共生菌を除去する操作を行うと、宿主が絶滅するまでの時間を延長する働きがあることが実験的に示されている(Koga et al. 2003)。自然界においても宿主の状態によって共生者の関係性が寄生的なものから相利共生的なものへと容易にシフトすることが考えられる。

本研究では共生者が宿主にとって寄生的な効果と相利共生的な効果を同時に備え持つと仮定し、モデル化した。さらに、その宿主が経験する環境変動によって顕在化する相互作用の影響が変化すると仮定した。宿主が経験する環境変動の度合いと共生者との相互作用の強さが如何なる関係であれば共生関係が維持されうるかを解析した。共生関係が寄生から相利共生へと進化してきたとするシナリオ(Roughgarden 1975)に生物の生息環境がいかに影響してきたかを考察する。


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