| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第56回全国大会 (2009年3月,盛岡) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) PA2-532

日本列島におけるオイカワの系統地理と国内移殖の実態

早川明里(岐阜大地域),高村健二(国立環境研),中島淳,河口洋一(九大院工),鬼倉徳雄(九大院農),*向井貴彦(岐阜大地域)

日本列島は多くの山地や島嶼によって成り立っているため,純淡水魚の分布拡大の障壁となる地形が多く,地域ごとに異なる魚類相が成立している.また,同一種が広域に分布する場合は,日本列島の形成過程と関連した地理的集団構造を持つと考えられる.そこで,本研究では関東以西に広く分布するコイ科魚類のオイカワ(Zacco platypus)の地理的集団構造を明らかにするために約600個体のミトコンドリアCytb遺伝子約1kbの塩基配列を決定し,系統地理解析を行った.また,オイカワは琵琶湖産アユの放流に混入することで全国に分布を広げたとされている事から,国内移殖の影響についての実態調査も目的とした.

本研究の結果,オイカワのmtDNAハプロタイプは大きく3つの系統に分けられ,それぞれを東日本型,西日本型,九州型とした.東日本型は東海地方と関東甲信越に分布し,地域間の遺伝的分化も見られた.西日本型はハプロタイプ数が多く,主に北陸・近畿地方から九州北部まで分布していたが,人為分布と思われるものが様々な地域に出現した.九州型は九州のみで発見された.これら3系統間の塩基配列差異は約2〜3%であり,コイ科魚類のCytb遺伝子で推定されている分子時計(ペアワイズ配列差異1.52%/Myr)を適用すると,約130万年〜200万年前に分化したと考えられた.また,東日本型の地域間の分化は木曽山脈の形成(約60万年前)と関連すると考えられた.琵琶湖産オイカワのmtDNAの人為分布は各地で見られたが,自然分布域内における攪乱の影響は比較的小さかった.


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