| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第56回全国大会 (2009年3月,盛岡) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) PA2-607

スクミリンゴガイに対する捕食者の影響―野外での操作実験―

*山西陽子(奈良女・院),吉田和弘(鳥大・院),遊佐陽一(奈良女・理)

スクミリンゴガイ Pomacea canaliculata は南米原産の大型淡水巻貝で,日本には1980年代初頭に食料として持ち込まれ,水田や河川等で分布を拡大している.本種は非常に高い繁殖能力をもつ要注意外来種であると同時に稲の幼苗を食害するため,天敵等を利用した個体群抑制の方法が模索されている.現在までに,河川における調査により,捕食者が本種の棲息を制限していることが示唆された(昨年度の発表).ただし,コイやカメ類など捕食能力の高い少数の大型種による可能性があり,小規模河川や用水路において一般的に個体数の多い小型捕食者が本種に与える影響は不明である.そこで今回は,全長15cm以下の小型捕食者が本種個体群に与える影響を野外実験により明らかにした.

佐賀県の農業用水路に,1.5mmメッシュの実験区( 1m×2 m×高さ1.45 m)を12区設置し,3種の捕食者(モツゴ,オイカワ,テナガエビ)を周辺水路の0倍,0.5倍,2.5倍の3水準の密度で放飼した(各4反復).そこに成熟したスクミリンゴガイ,同所的に棲息するヒメタニシ,タイリクバラタナゴ,植生としてオオカナダモを12区に均等に入れ,次世代のスクミリンゴガイ個体数が処理間で変化するかを3ヶ月間調査した.その結果,スクミリンゴガイの新規加入個体数は捕食者0倍区で0.5倍区や2.5倍区より有意に多く,0.5倍区と2.5倍区の間で差はみられなかった.このことより,外来種であるスクミリンゴガイに対し,小型捕食者も抑制力をもつことが明らかになった.したがって,一般的な河川や水路では,本種個体群は捕食者による制御を受けていると考えられる.


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