| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第56回全国大会 (2009年3月,盛岡) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) PA2-631

知床半島における外来アライグマの侵入状況と今後の対策

*池田 透(北大・文・地域システム),島田健一郎(北大・文・地域システム)

知床半島におけるアライグマの侵入情報は、2001年以来継続して得られているが、不確かな目撃情報が多く、確実な情報としては斜里町における轢死体1例と、羅臼町における写真記録1例があるに過ぎなかった。2004年から開始した痕跡調査及び試験捕獲においても捕獲や明確な痕跡確認には至らず、こうした経緯から知床におけるアライグマの侵入は非常に低密度で推移していると推測され、分布拡大に備えて情報の収集を継続してきた。

ところが、2008年夏にアライグマによるものと推定される明確なメロンの食害が斜里町内において立て続けに生じ、かつ10月には斜里町遠音別の国道334号上で、交通事故死体が回収された。メロン食害情報が得られた地域には明確なアライグマの足跡も残されており、改めて知床地域へのアライグマ侵入が進行しつつあることが危惧されるに至った。

2008年度の侵入状況調査では、メロン食害地域を中心に斜里町内での箱ワナによる捕獲を試み、かつ羅臼町も含めた知床半島一帯でアライグマの好む水辺に自動撮影カメラを設置して生息確認調査を試みたが、アライグマの確認・捕獲には至らなかった。斜里町内でのメロン等食害は一部地域に集中しており、カメラ設置環境で生息が予想される哺乳類の中でアライグマのみが撮影されなかったことから、未だ生息密度は低いものと推測される。しかし、外来生物の場合、低密度での潜伏期間の後に急激に個体数の増加が生じることが多いため、現在の知床におけるアライグマの状況は、潜伏期間の後期から増加に転ずる過渡期にあることが予想される。個体数が急激に増加をみせる以前に侵入個体を除去する必要があり、徹底したアライグマ除去作業が急務となっている。

現在、除去手法は箱ワナ捕獲が主流となっているが、今後は探索犬の導入など、新たな低密度下における除去手法の開発もまた急務となっている。


日本生態学会