| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第56回全国大会 (2009年3月,盛岡) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) PB1-262

共進化を考慮した食物網において移動分散が生物多様性に与える影響

*山口和香子(東北大・生命科学), 近藤倫生(龍谷大・理工), 河田雅圭(東北大・生命科学)

食物網には多様な種が存在しており、その維持機構の解明は生態学、また生物の保全において重要なテーマである。本研究では、以下のように、食物網がしばしば複数の局所群集を含んでいること、捕食者―被食者間で共進化が起こることに着目して、食物網における生物多様性の維持機構の解明にアプローチする。

複数の局所群集間で起こる生物の移動分散は、種や個体の供給による絶滅リスクの減少、遺伝的変異の供給による局所適応の促進、空間均質化といった効果をもち、局所群集やメタ群集全体の種多様性に影響を与える。これは競争的群集において示されているにとどまっているが、多栄養段階を含む群集においても、移動分散は局所適応の状態や種多様性に影響を与えることが予想される。

また、共進化する捕食者と被食者2種の系では、地理的に選択の働きかたが異なるなどにより、共進化に関わる形質が地理的に異なっていることが観察される場合がある(共進化の地理的モザイク)。しかしながら他種が存在する場合には、共進化している2種間の相互作用に他種が影響を与え、形質の地理的なちがいがゆがめられると考えられる。しかしながらこれまでの理論研究では、共進化する多種系のメタ群集のモデルはない。またこれまでの共進化モデルは、個体群動態や明確な進化プロセスを考慮していないものがほとんどである。

本研究では、個体群動態や明確な進化プロセスを考慮した個体ベースモデルを用いて、多種の捕食者と被食者が共進化するメタ群集において、移動分散が局所適応や形質の地理的分布、そして局所群集やメタ群集全体の種多様性にどのような影響を与えるか調べる。


日本生態学会