| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第56回全国大会 (2009年3月,盛岡) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) PB1-272

岩礁潮間帯固着生物群集における種間相互作用網の定量的解析

*辻野昌広,野田隆史(北大環境),山本智子(鹿大水産),仲岡雅裕(北大フィールド科学),堀正和(瀬戸内水研)

生物群集には多様な種が生息している。この多種共存はどのような機構により可能になり、また維持されているのだろうか。固着生物(樹木・草本・海藻・サンゴなど)で構成される群集は共存機構の研究に最適なモデルシステムである。固着生物は同種他種問わず、定着・生存のための共通資源である空間を巡る競争関係にある。

このような競争群集での種間相互作用について、先行する理論研究から次のような予測ができる。A強い種間相互作用は群集を不安定化させ共存を阻害するため、群集内では弱い相互作用が多くなる。また群集内で種が安定的に共存するためにはB相互作用関係(競争の優劣)が場所によって異なるか時間的に変化することが必要である。したがって、共存種数の多い群集ほどA弱い相互作用の割合が高く、B相互作用の時空間的変動も大きいと予測できる。

演者らは岩礁潮間帯固着生物を対象に群集構成種間の相互作用網構造を定量的に解析することで上記予測を検証した。野外調査では広範囲(北海道2地域・三陸・房総・南紀・鹿児島)にわたり長期(2002年から2008年)の観察を行った。定点占有種の変化からマルコフモデルにより推移確率行列を計算し安定平衡状態を求めた。その平衡群集での種の密度操作が他種に与える影響の大きさとして相互作用強度を定量化した。

その結果、A相互作用強度は弱い方に分布が偏る傾向が見られた。またB相互作用網構造が場所や季節により変異していた。この結果は理論研究の予測を支持する一方、これら相互作用網特性と共存種数との関連は不明瞭であった。このことは時空間的に変異する環境条件などその他の要因を考慮する必要性を示している。


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