| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第56回全国大会 (2009年3月,盛岡) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) PB1-288

北海道雨竜沼湿原のにおける水生植物と池塘の地形要因の関係について

*山崎真実(札幌市博・北大農学院),高橋英樹(北大総博),高田雅之(道環科研),佐々木純一(雨竜沼湿原を愛する会)

目的:一般に高山帯においては夏季の植物の生育期間が短く、そのうえ水生植物は生育環境が水域に限定されるため、より厳しい競争にさらされると予想される。雨竜沼湿原は北海道中西部の高山帯に位置するが多くの池塘で水生植物どうしの共存が確認されている。雨竜沼湿原の水質は全域において一様であるとされるため、本研究では池塘の形状に注目し、複雑な形状の池塘では多様な立地環境が生じることで水生植物の共存が可能になると推測し、水生植物8属の生育と池塘形状要因との関連を明らかにすることを目的とした。

方法:池塘に生育するコウホネ属、ヒツジグサ属、ヒルムシロ属、ミクリ属(浮葉性)、ミツガシワ属、ハリイ属、スゲ属、ミズニラ属の8属について、ランダムに選んだ218池塘毎に在・不在、被度を記録した。池塘の形状要因は水深、池塘面積、池岸延長線、肢節量、池塘と最近の川までの直線距離を計測した。Sorensenの類似商を算出し共存度とした。池塘毎に多様度指数H′(Shannon-Wiener関数)を算出し、池塘形状要因を説明変数、H′を目的変数として主成分分析を行った。

結果・考察:主成分分析の結果から、池塘形状要因では水生植物8属の生育状況を説明できなかった。Sorensenの類似商から、ミクリ属とコウホネ属およびヒツジグサ属、コウホネ属とヒツジグサ属の共存度が高かった。尾瀬ヶ原でのヒツジグサとオゼコウホネの1次生産量を比較した研究によると、ヒツジグサの方が低照度でも光合成速度が大きいとされ、池塘の優占種がオゼコウホネからヒツジグサに置き換わる現象も観察されている。雨竜沼湿原においても、水生植物の多様性には池塘の形状要因よりはむしろ、植物の生態的・形態的な相互関係が複合的に関与していると考えられる。


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