| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第56回全国大会 (2009年3月,盛岡) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) PB2-650

北限ユキツバキ集団の種子生産 -ポリネーター活動とクローン構造の視点から-

*渡辺洋一,星崎和彦,藤晋一,井上みずき(秋田県立大,生物資源)

本州の冷温帯の多雪地にはユキツバキが分布する。ユキツバキは近縁なヤブツバキとは花の形態が異なり、鳥媒の特徴の1つである筒状の構造が失われているため、ポリネーターがヤブツバキと異なる可能性がある。また、ユキツバキは伏条更新によって無性繁殖する低木でもある。このため、ジェネットあたりの占有面積が広い場合、他家花粉を受け取りにくくなり種子生産に影響する可能性がある。 また、ユキツバキは融雪後の4〜5月に開花する。春先の低温状態によっては訪花者の活動が制限され、花粉の移動が妨げられる可能性も考えられる。

本研究では、クローン構造の違いと訪花者の訪花頻度の違いに着目し、ユキツバキの種子生産に影響を与える要因について調べた。2008年にユキツバキ分布のほぼ北限である岩手県カヌマ沢試験地で以下の3つの調査を行った。1) 7ヶ所の10×10mプロット内の開花数と結実数を計測し、結実率を求めた。2) 訪花者の観察を5月に合計40時間行った。3) SSRマーカー7座を用いた遺伝解析によりクローン構造を決定した。これらの調査より以下の結果が得られた。1) 各プロットの結実率は10〜40%であった。2) 観察された訪花者はすべて昆虫であり、ハエ目、甲虫目など16種類の訪花昆虫が確認されたが、ヤブツバキで重要なポリネーターとされている鳥類の訪花は確認されなかった。3) クローン構造解析により、水平方向の長さが14m以上に及ぶジェネットが確認された。これらをもとに、ユキツバキの種子生産に影響を与える要因について考察する。


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