| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第56回全国大会 (2009年3月,盛岡) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) PB2-656

ツル植物の個葉形態と窒素含有量の種間比較-分布の地形依存性とよじ登り様式-

*楠本聞太郎(九大生資),榎木勉(九大農),久保田康弘(琉大理)

沖縄島北部の亜熱帯性常緑広葉樹林において、ツル植物の分布調査および生葉の採集を行い、各種のよじ登り様式に着目して、地形に対応した分布パターンと個葉特性との関係を比較した。

調査は琉球大学農学部附属与那フィールドで行った。面積約16 haの小流域において、直径2 cm以上のツル植物の毎木調査を行った。GPSを用いて、各個体の根元位置を測位した。地形パラメータとして、起伏量を数値標高地図(DEM)から計算した。同小流域において、樹冠最上部の生葉を採集した。採集した葉は、葉面積、乾重、炭素および窒素含有率を測定した。

毎木調査では、20種、930本のツル植物を記録した。記録したツル植物の内、巻きつき型が11種、巻きひげ型が1種、寄りかかり型が3種、付着型が5種であった。ほとんどの種が、谷に偏って分布していたが、谷から尾根にかけての分布範囲は種間で異なった。巻きひげ型および寄りかかり型の種は、分布が谷に限定されていた。巻きつき型と付着型では、谷から尾根にかけての分布範囲の種間差が大きかった。

比葉面積(SLA)は巻きひげ型、寄りかかり型、巻きつき型で大きく、付着型で小さかった。生葉の窒素含有率は、巻きひげ型と寄りかかり型で高く、次いで巻きつき型、付着型の順であった。巻きつき型では、分布が谷に偏る種ほど葉面積が大きくなる傾向がみられたが、SLAと窒素含有率に差は見られなかった。付着型では、分布が谷に偏る種ほど窒素含有率が高くなる傾向が見られたが、葉面積とSLAでは差は見られなかった。

ツル植物はよじ登り様式によって樹冠を形成する位置や、樹形による制限が異なる。これらの変異が、ツル植物の分布の地形依存性と個葉特性との関係に対応していると考えられた。


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