| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第56回全国大会 (2009年3月,盛岡) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) PB2-689

北極ツンドラ生態系における厳冬期の土壌呼吸の行方

*菅尚子(総研大・極域), 内田雅己(極地研), 小泉博(早稲田大・教育), 神田啓史(極地研)

積雪のある地域では、冬期の土壌呼吸は雪面から放出される。高緯度北極ノルウェー、スピッツベルゲン島で冬期に雪面からのCO2放出を測定したが、同島で冬期に土壌呼吸が認められるという報告があるものの、雪面からのCO2放出は認められなかった。本研究では、冬期、土壌呼吸によるCO2は放出されている可能性があるものの、何故雪面からCO2の放出が認められないのかを明らかにすることを目的とする。

2008年2月下旬にスピッツベルゲン島ニーオルスンで調査を行った。調査地の積雪は50〜100cm、積雪の下部には、土壌表面までの間に厚さ3〜5cmの氷の層が観察された。測定期間中の気温は-14〜-2℃、土壌温度は-7℃であった。雪面からのCO2放出は、雪面と積雪中のCO2濃度、温度および雪の密度を測定し、Fickの法則を利用して推定した。土壌からのCO2放出は、積雪下の土壌を採取し、実験室内で密閉法を用いて測定した。

雪面からCO2が放出されている場合、CO2濃度は積雪深度が増すほどCO2濃度は高くなる。しかし、本調査では、積雪中のCO2濃度はほぼ一定で、有意なCO2濃度勾配は検出されず (p>0.05)、雪面からのCO2放出は検出限界以下であった。しかしながら、土壌からCO2放出は-10℃においても確認された。したがって、土壌から放出されたCO2は何らかの理由で積雪中に拡散されなかった可能性が考えられる。本発表では、CO2が拡散されなかった理由の一つとして、積雪中にみられた氷の層に着目し、室内実験でCO2が氷の層を透過するのかを調べることで、氷の層がCO2の拡散に与える影響について報告する。


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