| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第56回全国大会 (2009年3月,盛岡) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) PB2-696

熱帯林土壌分解系における微生物の活性はリン律速か?−異なる基質のインプットと分解系の反応−

*喜多智,今井伸夫,北山兼弘(京大生態研セ)

森林生態系において窒素(N)やリン(P)は不足しがちな養分で、しばしば森林の生産や分解を制限する要因となる。特にPは、風化の進んだ熱帯林土壌において制限要因となることが知られている。しかし、主要な分解者である微生物の活性がPに律速されているかどうかは不明である。本研究は、熱帯林土壌分解系における微生物活性はP律速かどうか?を明らかにするために、熱帯土壌に異なる基質(N、P)を添加し微生物の活性や量の変化を調べた。

ボルネオ島(マレーシア・サバ州)低地熱帯林の原生林の土壌において、有機物層(O層)、土壌表層(A層)、土壌深層(B層)の3層に分けてサンプルを採取し分析に供した。室内において培養し、十分な量のNおよびPを土壌に添加し、経時的に土壌呼吸速度、N無機化速度、微生物バイオマス濃度を調べた。その結果、A層の土壌呼吸速度はN添加>P添加≒コントロール(無添加)、微生物バイオマスC濃度はP>コントロール>Nとなった。コントロールと比較して、Pを添加すると微生物が呼吸(活性)より微生物バイオマス(量)を増加させる傾向があり、A層ではPが微生物の律速要因となっていることが推察された。O層では、呼吸量がP≒コントロール>N、微生物バイオマスはN≒P>コントロールであった。N、Pとも微生物バイオマスを増加させる傾向があり、土壌呼吸速度がNで低いことから、O層ではNが微生物の律速要因となっていることが推察され、異なる層(異なる有機物分解段階)では、異なる栄養分が有機物分解の律速要因になることが推察された。


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