| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第56回全国大会 (2009年3月,盛岡) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) PC1-389

奥羽山系のブナ天然林におけるアカネズミとヒメネズミの遺伝子流動

*高野雄太,井上みずき,藤晋一,星崎和彦(秋田県立大・生物資源)

森林性のネズミにとって、天然林が連続している場合としていない場合では、地域間の遺伝的交流の程度が違う可能性がある。閉鎖林や疎林の地上部を主な生活の場としているアカネズミと、極相林において半樹上生活を送っているヒメネズミとでは、利用空間が異なるため遺伝的交流に違いが生じるかもしれない。本研究では、アカネズミとヒメネズミの4つの地域個体群における、遺伝子流動と遺伝的多様性について調べた。

調査地は奥羽山系北部のブナ天然林で、北から順に八幡平・国見峠・真昼岳・焼石岳の4地域個体群である。前者の3地域はブナ林が連続しているが、真昼岳と焼石岳の間では古くから人々が交通や植林地などに土地を利用しており、少なくとも数十年間ブナ林が分断されている。ネズミの捕獲調査を8〜10月の間に行った。それぞれの地域1〜8haの範囲で、生け捕り式ワナを用いた。捕獲したネズミは、種・性別を記録し、組織片を採取した。採取した組織片からDNAを抽出し、4個のマイクロサテライトマーカーを用いて多型解析を行った。

いずれの種においても、地域間の距離や森林の分断化と遺伝的な分化の程度の間には関係が認められなかった。また、ヒメネズミでは、アカネズミよりも遺伝的多様性が低かった。このことから、両種ともに地域間の遺伝的な分化は、天然林の分断化以外の要因に起因していることが示唆された。ヒメネズミの遺伝的多様性がアカネズミよりも低かったのは、ヒメネズミがより森林に依存しているという生活様式に基づく違いが影響しているかもしれない。


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