| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第56回全国大会 (2009年3月,盛岡) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) PC1-416

南西諸島における大型ゲンゴロウ類の生息環境

*北野忠(東海大・教養),田島文忠(昭和環境システム),苅部治紀(神奈川県生命の星・地球博)

わが国においては、開発による池沼の消失や水質の悪化、圃場整備による乾田化等により、ゲンゴロウ類をはじめとする止水性水生昆虫の減少が著しい。南西諸島においても例外ではなく、止水環境の悪化・消失とそれにともなう水生昆虫の減少が危惧されている。そこで今回は、一般に減少が著しいとされる大型ゲンゴロウ類の生息状況および各種の生息環境を明らかにすることを目的とした。

2004年以降、南西諸島の14島にある湿原、ダム、池、水田、水路等の止水域計147地点で、大型ゲンゴロウ類であるCybister属4種の生息状況を調べた。その結果、フチトリCybister limbatusが確認された地点はわずかに2地点で、確認された個体数も極めて少なく、ヒメフチトリC. rugosusが確認された地点も28地点と多くはなかった。一方、コガタノC. tripunctatus lateralisとトビイロC. sugillatusはそれぞれ53、47地点と前2種よりも多くの地点で確認され、個体数も多かった。

確認地点数は限られるが、フチトリとヒメフチトリは水深が50cm以上で、多くの場合全リンが0.03mg/L以下の池や湿地を生息の場としていた。よってこれら2種は、遊泳可能な水域が十分にあり、リン濃度が抑制された貧栄養な環境を好むと推察された。一方、コガタノとトビイロは、水深が50cm未満の浅い水域でもみられ、さらには全窒素、全リン濃度が制限因子になっていないと推測された。以上から、コガタノとトビイロは生息可能な環境の幅が広いのに対して、フチトリとヒメフチトリは富栄養化に対する感受性が高いと推測され、生息可能な環境が限定されることから、確認地点数や個体数が少ないものと考えられた。

(文中の和名の”ゲンゴロウ”は省略した)


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