| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第56回全国大会 (2009年3月,盛岡) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) PC2-830

希少種ヒナイシドジョウの分布様式:流域の土地利用が与える影響

*川西亮太,井上幹生,三宅洋(愛媛大・院・理工)

流域の土地利用の変化は,水や土砂の流出過程の改変を介して,河川の物理的環境に影響を及ぼす.また,その影響の検出は空間スケールに依存的であるため,土地利用が河川生物に及ぼす影響を検討する際には,空間スケールを考慮することが重要となる.ヒナイシドジョウCobitis shikokuensisは,四国西部の7水系でのみ生息が確認されている日本固有種であり,環境省の絶滅危惧IB類に指定されている.愛媛県重信川流域では,本種は上流域から河口付近まで広く分布するが,支流単位でみると広く分布する支流とほとんど生息していない支流がある.また,これまでの調査により,本種の分布には河床の礫構成が強く影響していることが明らかとなっている.本研究では,支流間での分布傾向の違いが土砂流出を介した流域の土地利用の違いによるものなのかどうかを明らかにすることを目的とした.また,どの程度の空間スケールにおける土地利用の違いが本種の分布に反映しているのかについても検討した.重信川上流域と6つの支流に24の調査地を設置し,ヒナイシドジョウの生息状況と河床の細粒土砂含有率および流域の土地利用を調べた.土地利用については,調査地よりも上流側の集水域を対象に,5つの空間スケールで評価した(流路から50,100,200,400mおよび集水域全体).これらの関係を解析した結果,河床内の細粒土砂含有率と本種の生息密度との間には強い負の関係が見られた.また,細粒土砂含有率には農地率との間に強い負の関係が見られたが,都市率との間に関係性は見られなかった.細粒土砂含有率に対する農地率の影響は集水域全体よりも流路に近い空間スケールで評価した時に顕著であった.このことから,流路に比較的近い場所の農地が土砂供給源となっており,本種の生息に影響を及ぼしている可能性が示唆された.


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