| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第56回全国大会 (2009年3月,盛岡) 講演要旨


シンポジウム S03-2

アカマツ林遷移とキノコ相の変化

赤石大輔(能登半島里山里海自然学校)

アカマツ林は、かつて木材や燃料の供給源として利用され、管理されてきた。またアカマツ林にはマツタケをはじめ多くのキノコ類が発生し、古くから親しまれてきた。アカマツ林に発生するキノコは菌根菌を多く含み、マツの共生者としての役割を担っている。例えば実生の段階では菌根菌を持つ実生で生長がより早く、成木に対しては水分の吸収を補助し乾燥耐性を高め、結果的に「マツ枯れ」にも抵抗力を持たせることなどが知られている。このようにアカマツ林に発生するキノコ類は、人間の利益以外にアカマツ自体の存続にも不可欠な存在であるといえる。本発表ではアカマツ林のキノコ類に注目し、これまでの研究を振り返ると共に、奥能登珠洲市におけるマツタケ山の再生事業を紹介しながら、アカマツ生態系の保全について議論したい。

アカマツ林のキノコ相の変化は(1)アカマツの生長段階と、(2)土壌の形成段階の2つが大きく影響する。(1)では、これまでハツタケ・アミタケなどは5年から20年生の若いアカマツ林に、マツタケは30年から60年生の成木林に、それ以降は減少することが知られている。(2)では、アカマツ林が成熟するとともに落葉量が増加し腐植層が形成されていく。腐植層を好まないマツタケなどは減少し、代わりにテングタケ・ベニタケ・イグチなどが増加する。アカマツ林におけるキノコ相の変化は、アカマツの生長や遷移と合わせて、人間の関与が大きな要因を占めている。

珠洲市はマツタケ山整備事業として、(1)と(2)が進行したアカマツ林にて、老木の伐採と腐植層の除去等を試行している。発表者は珠洲市で2007年〜2008年に整備履歴3年〜5年のアカマツ林6地点で管理施行後のキノコ相の変化を調査した。結果3地点でマツタケ発生を確認し、遷移初期に発生するキノコ類の増加および後期のキノコ類の減少が観察された。


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