| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第56回全国大会 (2009年3月,盛岡) 講演要旨


シンポジウム S15-4

生物多様性の評価と生態系のリスク評価

*松田裕之(横浜国立大学環境情報研究院),田中嘉成(国立環境研究所環境リスク研究センター)

生物多様性条約の2010年目標の弱点は、具体的な数値目標がない点だと言われる。本公演では絶滅リスクとその増分をはじめとして、いくつかの定量的評価手法と環境影響評価への応用方法を提案する。

生物多様性が損なわれている典型例は水産資源の乱獲による海洋生態系だといわれる。しかし、この見解は修正されつつある。依然として深刻な影響があることに変わりはないが、最悪の例かどうかは疑問である。

最も評価しやすいものは種の個体数と分布の減少である。局所個体群に汚染など新たな負荷による絶滅リスクの増加は個体群存続可能性分析(PVA)により評価できる。環境省植物レッドリストにおいては、実際に絶滅リスク評価により絶滅危惧種の判定が行われている。そこでは各区域(約10km四方のいわゆる二次メッシュ)の個体数規模と減少傾向から絶滅リスク、多様性の減少傾向を評価する。新たな開発による生息地減少の有無により絶滅リスクの差を求め、環境影響評価に応用できる。将来シナリオにより負荷や影響因子の有無が異なれば、複数の将来予想も可能である。

生態機能の代替的な種の何割が影響を受けるかにより、生態系機能への影響を評価できる。化学物質の生態リスクでは通常、5%の種に影響が出る濃度が環境基準値として利用される。

環境省生物多様性センターにはさまざまな生物種の分布情報があり、四半世紀前との比較も可能である。本講演では、架空のデータを用いて、これらの多様性減少予測を行う手法を提案する。が、分布の在不在情報(の四半世紀前との比較)から絶滅リスクを評価し、将来予測を行う手法を紹介する。


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