| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第56回全国大会 (2009年3月,盛岡) 講演要旨


シンポジウム S24-4

ソメイヨシノとサクラ属野生種との交雑による遺伝子攪乱

向井 譲(岐阜大)

ソメイヨシノは接ぎ木により増殖され全国各地に植栽されている。ソメイヨシノにはしばしば結実がみられるが、サクラは自家不和合であるため、花粉親はソメイヨシノ以外のサクラであると推定される。逆に、ソメイヨシノが花粉親となって周辺のサクラ野生種を結実させるケースも想定される。ソメイヨシノとサクラ属野生種との交雑実態の解明を目的として、ソメイヨシノが胚珠親となる場合と花粉親となる場合とについて調査した。

ソメイヨシノ6株から採種した合計270種子の遺伝子型をモモの核マイクロサテライト(SSR)マーカー5座を用いて決定し、周辺約200m以内に存在するヤマザクラ(自生)及びエドヒガン(植栽木)を花粉親候補とし、同様に遺伝子型を決定して花粉親を同定した。その結果、ソメイヨシノから採取した種子は全て他殖であることを確認し、155個については候補木中に花粉親を同定できた。また、花粉親の93.3%はヤマザクラであり、エドヒガンは6.7%であった。次に、花粉親としての貢献度に影響を及ぼす要因として花粉親の胸高直径、母樹との空間距離及び開花の重なる日数を選び、一般化線型混合モデル解析により評価した。その結果、開花の重なる日数が最も強く影響したことが明らかになった。ソメイヨシノは雄性先熟であると推定されるため、ソメイヨシノより開花日の早いエドヒガンの貢献度が低く、開花日の遅いヤマザクラの貢献度が高かったことを反映していると思われる。

ソメイヨシノ植栽の周辺(約300m以内)に自生又は植栽されているヤマザクラ、オオシマザクラ、オオヤマザクラ及びエドヒガンから採種した合計216個の種子を対象として前述のSSRマーカーを用いてソメイヨシノの花粉によって生じた種子を同定した。その結果、29個(13.4%)がソメイヨシノの花粉により結実したことを確認した。


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