| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第56回全国大会 (2009年3月,盛岡) 講演要旨


企画集会 T05-1

遷移初期種であるヤマウルシの樹形変化

*長田典之(東北大・理)

ヤマウルシは枝、葉のサイズが大きく、単純な樹形をつくるため、シュートおよび個体の形態を調べるのが容易である。演者はこれまでヤマウルシを対象として、生育段階に応じてシュート形態がどのように変化するのかに着目してシュートと個体を結びつける研究をおこなってきた。

個体レベルの研究では、樹冠形やシュート数、着葉面積の高さに応じた変化などを調べた。分枝は樹高0.5-2 m程度で起こり、頂芽の死亡をともなう仮軸分枝が優先していた。樹高に応じた樹冠面積の変化は未分枝個体よりも分枝個体のほうが大きかった。一方、分枝状態にかかわらず、総着葉面積は樹高に応じて単調増加した。このため、葉面積指数(総着葉面積/樹冠面積)と高さの関係は凸型になり、樹高が高い個体では小さくなっていた。

シュートレベルの研究として、様々な高さのシュートについて、前年のシュートの光環境や着葉面積、高さが当年枝の重量や形態に及ぼす影響を調べた。この結果、当年枝重量は前年の葉面積が多いほど、光環境がいいほど、また樹冠内で相対的に光環境がいいほど大きくなっており、逆に高い位置のシュートほど小さくなっていた。高い位置のシュートほどそのシュートを支える基部の幹枝に投資しなければならないバイオマスが増加するため、同一受光量でも当年成長量が小さくなると考えられた。また、当年枝の直径―伸長量のアロメトリも変化し、高い位置の枝ほど長さあたりの直径が大きくなっていた。これらの結果に基づいて、高さに応じた当年枝重量、枝角、アロメトリの変化が垂直方向の成長に及ぼす影響を調べたところ、高さ0-1mの枝に比べて4-5mの枝では、枝角およびアロメトリが変化することによって成長量が5−6割に減少していることがわかった。

これらのシュートレベルの結果と個体レベルの結果を関連づけることで、成長に応じてヤマウルシの樹形がどのように変化していくのかを議論する予定である。


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