| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第56回全国大会 (2009年3月,盛岡) 講演要旨


企画集会 T30-5

盛岡市近郊に残存する農耕地周辺の半自然草地

島田直明(岩手県立大学)

岩手県盛岡市近郊の農耕地周辺ではフクジュソウやミチノクフクジュソウといった個体数が減少しているとされる種が農耕地周辺でよくみられる。そこで本研究ではフクジュソウ類(以後フクジュソウと記す)を手掛かりとして農耕地周辺の半自然草地の現状について調査を行った。調査地は岩手県盛岡市近郊の玉山区川又・日戸地区周辺である。

植生調査は農耕地周辺の草地に2m四方の方形区を設定し,63地点(うちフクジュソウを含む群落43地点)の植生調査を行った。調査は春季(2008年4・5月)と夏季(2008年8・9月)に同一地点で行った。得られた資料はフクジュソウを含む群落をTWINSPANおよび植物社会学的表操作で群落タイプを区分した。その後フクジュソウを含まない群落と種組成を比較した。

フクジュソウが認められた植物群落は4つに区分された。タイプAはカラスビシャク,ハルジオンなどで区分され,エノキグサなどが認められる畑地と共通種の多い群落,タイプBはタチツボスミレ,ノコンギクで区分され,クサソテツ,チダケサシなどが認められる畦畔にみられる群落,タイプCはヨシで区分されミゾソバ,キツリフネなどがみられる湿性植物で特徴づけられる群落,タイプDはツリガネニンジンで区分され,スズラン,カワラナデシコなどがみられる二次草地であった。

フクジュソウを含まない群落は,種組成からタイプA,Bに類似したもの(それぞれA',B'とする)と,フクジュソウを含む群落とは異なる種組成のタイプEが区分された。タイプAとA',BとB'ではフクジュソウを含む群落の方が出現種類数,多様性指数ともに高い結果となった。フクジュソウを含む群落に特徴的に出現する植物はニリンソウ,ヒメニラといった春植物や環境省レッドリスト準絶滅危惧種のナガミノツルキケマンなどが認められた。


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