| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


一般講演(口頭発表) C1-06

北関東における低地ブナの集団構造と種子生産

*鈴木和次郎(森林総研),竹澤和亮(関東森林管理局森技セ),池田伸(関東森林管理局森技セ)

茨城県中央内陸部の低標高地に、ブナの小集団が点在することが報告されている(原、2006)。これらのブナは、常緑性のシイ・カシ類と同所的に分布することが特徴であり、従来の冷温帯を代表するブナのイメージとは趣を異にしている。低標高におけるブナの分布の背景として、この地域特有の気候条件あるいは地史的背景が指摘されている。本研究では、この地域におけるブナ集団の分布実態とその群集構造、そして集団の維持に関わる繁殖特性を調査したので、報告する。調査地は茨城県内陸中央部の低標高にあるブナの自生地5林分(御前山、仏頂山、佐白山、高館山、西金砂山)および山地帯(加波山、吾国山)にあるブナ天然林および二次林である。調査は、各自生地に20mx30mの調査区を設け、毎木調査により群集組成を明らかにするとともに、各地のブナの集団サイズを調査した。また、低地に分布するブナ集団の維持機構を解明するために、山地(加波山:標高600m)および低地ブナ(御前山:標高100m)の5-10個体の樹冠下にシードトラップを設置し、繁殖様式を2年間に渡って調べ、比較した。この地域の低地ブナは、現在、前述の5地区で確認されており、標高は100m-400mであった。集団のサイズは、最小で2個体、最大でも22個体であった。ブナの分布する林分の群集構造は、落葉広葉樹の占める割合は高いものの、ブナの優占度は極めて低く、スダジイ、アラカシ、ウラシロガシなど常緑性のシイ・カシ類が随伴した。2年間だけの調査ではあるが、種子生産は、加波山、御前山の2集団で、ほぼ連動する傾向が見られた。しかし、両集団とも健全種子はほとんど見られなかったため、低地ブナの低密度集団の繁殖特性を把握することは出来なかった。


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