| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


一般講演(口頭発表) C2-09

北海道アポイ岳における草本植物群落の変動

*冨田美紀(静岡大学・理・院),田中正人(北海道様似町教育委員会),渡邊定元(森林環境研究所),増沢武弘(静岡大学・理)

北海道南部の日高山脈南端に位置するアポイ岳は810.6mという標高にもかかわらず高山性の植物が数多く生育し、その中にはアポイ岳の固有の植物も多い。このような標高に一般的に高山帯で見られる高山植物や固有種・遺存種が存在している要因としては、海岸からの夏季における濃霧の発生による日射量の減少とそれに伴う気温の低下、母岩が超塩基性のカンラン岩であり化学的・物理的性質から生育する植物群が限られていることなどが挙げられる。このようにアポイ岳はカンラン岩土壌とカンラン岩土壌特有の高山草本植物群落および、山頂の植生の逆転現象がみられる山として知らており、1981年には日高山脈襟裳国定公園の特別保護区に指定されている。

しかし、1959年と1988年にアポイ岳周辺の高山草本植物群落の面積を航空写真によって測定した結果、高山草本植物群落が縮小していたことが明らかとなった(渡邊, 2001)。それらのデータをもとに、我々は2009年5月にGPSを用いて高山草本植物群落の面積を測定することにより、20年前と現在の高山草本植物群落の面積の比較を行った。また、1970年から2000年にかけてハイマツやキタゴヨウの個体数の増加が示されており(増沢他, 2005) 、高山草本植物群落の縮小の要因としてハイマツの分布拡大の影響が考えられた。そこで、ハイマツの年枝幅を測定することにより、近年のハイマツの年枝成長量を算出した。

20年前より現在の高山草本植物群落は縮小していた。アポイ岳の固有種であるヒダカソウ群落も縮小していた。また、近年のハイマツの成長量は大きかった。これらの結果をふまえて、近年のハイマツの大きな伸長が高山草本植物群落を縮小させていることが示唆された。


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